一時的な対応:行き詰まる前に「つなぐ」という考え方
介護の中で苦しくなりやすいのは、「この状態をずっと続けなければならない」と感じてしまうときです。
実際には、すべてを今すぐ決める必要はなく、状況を一度つなぐための「一時的な対応」という選択肢があります。
ここでは、恒久的な解決を急がず、負担を下げるための考え方を整理します。
1. 一時的な対応は「逃げ」ではなく調整のための手段
一時的な対応という言葉には、「その場しのぎ」「本質的ではない」といった印象を持たれることがあります。
しかし実際には、状況を冷静に見直すための時間を確保する、重要な調整手段でもあります。
介護は、本人の状態や家族の余力が常に変化します。
その変化に合わせて対応を調整するためには、いったん負担を下げる期間を設けることが合理的な場合もあります。
一時的な対応は、長期的な判断を支えるための「余白」をつくる役割を持っています。
2. 「今つらい部分」だけを切り出して考える
行き詰まりを感じるとき、問題がすべて重なって見えてしまうことがあります。
しかし実際には、負担の原因は特定の場面に集中していることが少なくありません。
そこで有効なのが、「今いちばんつらい部分」だけを切り出す考え方です。
たとえば次のように整理できます。
- 夜間の対応だけが限界に近い
- 入浴や排泄の介助が負担になっている
- 介護者の体調や睡眠が崩れている
すべてを変えようとせず、負担が集中している部分だけを一時的に外部に渡すことで、
全体が落ち着くケースも多くあります。
3. 一時的な対応には複数の形がある
一時的な対応は、一つの方法に限られるものではありません。
状況や目的によって、いくつかの形を組み合わせることもできます。
- 短期間の宿泊利用による休息の確保
- 訪問サービスを一時的に増やす
- 家族以外の人に見守りを任せる
- 生活リズムを組み替えるための調整期間
重要なのは、「これで最後にする」と決めないことです。
あくまで状況を立て直すための一手段として捉えることで、
心理的なハードルも下がりやすくなります。
4. 一時的な対応を入れると見えてくるもの
一時的な対応を取り入れると、それまで見えなかったことが見えてくる場合があります。
日常の負担が下がることで、初めて冷静に考えられるようになるからです。
たとえば、次のような気づきが生まれることがあります。
- 思っていた以上に疲労が溜まっていたこと
- 在宅介護の継続が現実的かどうか
- 外部の支援を使うことへの抵抗感の変化
これらは、追い込まれた状態では見えにくいものです。
一時的な対応は、判断の質を上げるための準備期間とも言えます。
5. 「戻す」か「変える」かは後で決めていい
一時的な対応を取ると、「元に戻さなければならない」「次を決めなければならない」と焦りが生じることがあります。
しかし、その判断を急ぐ必要はありません。
まずは、負担が下がった状態で生活を回してみることが大切です。
そのうえで、次のように考える余地が生まれます。
- この形なら続けられそうか
- 一部だけ恒常的に外部に任せられないか
- 別の選択肢を検討する必要があるか
一時的な対応は、結論を先送りするためのものではなく、
より納得できる判断につなげるためのプロセスです。
そう捉えることで、「つなぐ」という選択が、現実的な意味を持ちやすくなります。
